「花、香る歌」はひっそりと
2016-07-13



 情報を積極的には取り入れず、自分の中に何らかの動機が生まれるまではなかなか動かない性格ということもあり、気になっていた映画や芝居を見逃してしまうことが昔から良くある。

 シネマート新宿でロードショー上映されていた映画「花、香る歌」もその一つで、気がついた時には終わっていた。それが、つい最近になって本物のパンソリを聴いたものだから、どこかでまだ上映しているのではと探したら下高井戸シネマでやっていた。単館系の映画館として随分前から名前だけは知っていたけれど訪ねたのは初めてのことだ。

 駅から歩いてすぐの所にあるのに、7階建の1階が店舗になっている建物は、ごく普通のマンション風で、注意しないとそのまま通り過ぎてしまうような静かなたたずまいだった。中に映画館があるようにはとても見えない。おそらく、あらかじめ目当ての映画を調べて観に来る客がほとんどなのかもしれない。

 主演のペ・スジは、K-POPの「miss A」というグループのメンバーだが、私がそれを知ったのは映画「建築学概論」を観た後のことで、低い声と清楚なイメージからは、激しいダンスパフォーマンスを繰り広げる歌手とは思えなかった。その後、ドラマ「ドリーム・ハイ」を観た時も小柄に見えるコ・ヘミ役が最初は彼女と結びつかなかった。そして、今度はパンソリの歌い手だという。若くして、なかなか異能の持ち主のように見える。

 映画の内容は、韓国で初めて女性のソリックン(パンソリの歌い手)となったチン・チェソンと、その師匠でパンソリを体系化したシン・ジェヒョ、そして26代高宗の父興宣大院君の三人を巡る実話に基づく物語。韓国語の原題が、師弟愛の歌ともいえるシン・ジェヒョの「桃李花歌」なので、パンソリの中でも「春香伝」が良く似合うのだろう。以前、イム・グォンテク監督の「西便制」や「春香傳」を韓国文化院の映像資料室で観ていた頃が懐かしい。

 そういえばエンドタイトルを観ていて気がついたのだが、過日に生のパンソリを聴かせていただいた安聖民さんがパンソリの字幕の監修をなさっていたようだ。

明後日まで。
[映画]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット