楽しい街の書店があった
2017-03-12


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 過日、神楽坂で翻訳家金原瑞人氏の講演を聴いた時に『BOOKMARK』という無料のパンフレットを貰った。第6号ということだったので、バックナンバーを読みたいと考えてWebページを開いてみたら、既にオンラインで公開されていた。併せてパンフレットの配布先も掲載されていたので、神奈川県内に三カ所あるうちの一つ「ともだち書店」を検索してみたら、なんと日吉にある。最寄り駅は市営地下鉄の日吉本町だが、東横線の日吉駅からも歩いて行けないことはない。先週の水曜日、たまたま日吉へ髪の毛を切りに行くついでがあったものだから、少し早めに出かけて寄ってみることにした。

 日吉駅西口の放射状に伸びる一本、地元では「普通部通り」と呼ぶ道を進み、商店街が途切れた辺り、小学校を右に見ながら、住宅地が並ぶ坂をやや早足で進むこと15分。○○マップのおかげで、無事たどり着いた。小さなエントランスに置かれたテーブルや椅子に、チラシや案内がちょこんと載っていて、間口一間半ほどのガラス窓の向こうに本棚が透けて見える。

 奥にいるのは、その日のボランティア。多くが主婦だそうだ。元は小さな街の書店だったが、主人夫婦の引っ越しに伴い、地域の本好きの交流の場として引き継がれたという。雑誌と文庫・新書を中心にした近頃の書店とは全く違い、その棚を占めるのはほとんどが絵本と児童書だ。一部に最近流行りの雑貨を置くレンタルボックスもあるが、これはどう見ても専門書店という構えだ。ただ、敷居は低い。気さくなボランティアの書店員が、絵本を選ぶ相談にも乗ってくれるらしい。

 60過ぎのおじさんが孫の絵本でも買いに来たと思われる前に、こちらから件のパンフレットの話しを切り出したら、自己紹介代わりに出したチラシも手伝って大倉山ドキュメンタリー映画祭の話しで盛り上がった。しばらく歓談した後、のんびりと棚を眺めていたら、あの個人出版社「夏葉社」の本が10冊近く置かれているコーナーを見つけた。なんと、島田潤一郎さんもここを訪れたことがあるという。夏葉社の本のイラストから今は無き早川書店のブックカバー、その画家藤原マキさん。そこから佐々木マキを介して村上春樹へと次々に話しの花が咲いて、気がつけばあっという間の30分だった。

 こんな書店が近くにあったら、どんなに良いだろうと思う。また訪ねる予定だ。

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