三度目の殺人は誰が?
2017-10-06


禺画像]
先月末に都内をめぐった日のこと。昼前と夕方の二つの予定の間をどうして埋めようかと考えて、結果的に選んだのは久しぶりとなる劇場での映画鑑賞だった。
 是枝裕和監督の「三度目の殺人」。三週目に入っていたせいか新宿ピカデリーは思いのほか空いていた。是枝さんの作品は「ワンダフルライフ」以降、映画館で観ることが多い。
 まだ上映中の作品なので内容には触れないが、この作品は“今”という時代に向けて創っている。あたりまえと言えばあたりまえだが、そうでない作品が如何に多いことか。
 いくつものメタファの中には、過去に何度もくりかえし出てくる“死者”についてのものもあるが、今回はそれ以上に“贖罪”が多くあった。それらについて考えてみたらどうかと監督は問うている。
 そして、もう一つ。一見淡々と過ぎてしまったように見える後半の1シーンは、おそらく念入りに準備され、相当数の“テイク”があったのではないかと思われる。ごく自然に見えるので、軽く流してしまいそうになるのだが、日本的な人物風景を切り取って表現することにかけては当代随一の監督なのだ。その手腕が“三度目”の殺人の核心を描いている。これも監督が問うていることだ。
 いやでも、考えることを余儀なくされる。そういう映画を観たせいか、脳をクールダウンさせるために、私はひと気のない夕方の亀戸天神をうろうろと歩きまわらなければならなかった。
[映画]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット